「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」

一言で言えば、真夏の夜の夢。美しい作画でトリッキーなカメラアングルはやはりシャフト作品。それにヒロインの女の子が可愛い。
賛否両論あるらしいけど、難しい事は考えず、打ち上げ花火を見るような気分で観ると良いのかもしれない。

以下ネタバレなので、続きを読む記法で。

 パクリとまでは言わないけれど、最近のアニメ作品に似たような描写が多い。挿入歌を印象的に使うのは「君の名は。」っぽいし、タイムリープは「時をかける少女」だし、電車の描写は「千と千尋の神隠し」だし。そして学校のシーンは「物語シリーズ」っぽいし。

 あと、作品のテーマというか主題が分かりづらく、ラストシーンの投げっぱなし感が評価を下げるのかもしれない。

 とはいえ、じっくり映像を読み解いて意味を考えてゆくとテーマも見えてくるし、アニメならではの映像表現も面白い。

 テーマは夢と成長。最初はなずなの顔も直視できず、気持ちを伝える事すら出来ないほど典道は幼いんだけど、タイムリープを繰り返すうちに成長して告白するところまで行く。なずなも親の前で駄々をこねて駆け落ちとか言い出すのに、そんなの無理なんだって気付く。

 映像に注目すると、タイムリープ後は同じシーンでも広角レンズや魚眼レンズで見たように描いている。何でかなーと思ってたけど、これは非現実感を強調しているのだ。そして3回目くらいになると、もはや線画みたいになってしまう。そう、これは同じ時間を繰り返すタイムリープじゃないんだ。夢と妄想の世界に迷い込んだんだ。その事に誰しも気づけるように、花火が平らになったり、花びらみたいになったりするのは良い演出だった。

 「もしも」を叶える球を投げ続け、世界はどんどん歪んでゆく。誰でも分かるくらいおかしな世界になって、結局球は四散する。そして、球のカケラに夢の世界が映し出される。

 最後のシーンで、教室に転校したなずなはもちろん、典道も居ない。彼らの夢は叶ったのだろうか。それも未来の可能性の一つとして残したままエンディングを流せるのは未来の定まらない若者を描いた作品ならではだ。