能登中島駅~配線略図で巡るローカル線~

 『花咲くいろは』というアニメがあった。北陸の温泉宿を舞台に若い女の子が右往左往する話なのだが、聖地巡礼に行こうということで北陸を訪れたのは2011年の夏だった。もちろん聖地の西岸駅や湯涌温泉は訪れたのだが、あえてここでは能登中島駅を紹介する。この駅がなんとも味わい深いのだ。

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能登中島駅配線
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能登中島

 のと鉄道七尾線は非電化単線のローカル線である。元国鉄路線ということで古きよき施設が残されている。まず駅舎の面構えがよい。木造平屋の駅舎に入り口がオフセットされた位置に空いている。TOMIX(鉄道模型メーカー)の木造駅舎セットそのままだ。ちょこんとした待合室を抜けると1番線ホームに通じる。跨線橋を渡ると2番線・3番線に行ける。1番線の脇には貨物側線の跡があり、3番線は折り返し列車に対応している。

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 典型的な2面3線構造の国鉄形配線だが、能登中島駅の3番線は使用停止中となっていた。そして3番線には今は使われなくなった郵便車が保存されていた。今のように長距離トラック輸送が一般的でなかった時代、郵便は鉄道で輸送されていた。郵便車には郵便局の職員が添乗し、郵便物の仕分け作業を走りながら行っていたそうだ。職員が乗っているため郵便車は貨物ではなく客車であり、急行列車や普通列車の端に繋がれていたものらしい。

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 七尾線ではもっぱらディーゼルカーが運用されているが、客車列車が乗り入れていたことがある。JR化後まもない1989年から1992年まで急行「能登」号の一部が輪島駅まで乗り入れていた。確かに構内を見渡してみると有効長がたっぷりあり、それなりの客車列車が乗り入れても大丈夫そうに思える。保存されている郵便車を見ながら当時を偲んだ。

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 さて能登中島駅の配線でもう一つ触れておくべき点は、折り返し運転が出来るようになっている点だ。通常の交換駅では、上り列車と下り列車がすれ違うことしか出来ないが、この駅では1番線が逆線出発出来るようになっている。七尾駅方面から来た列車は通常であれば1番線に停車し、穴水方面に出発してゆく。しかし七尾駅方面に折り返して出発するための信号機が備わっている。七尾線の距離を見てみると、能登中島駅はだいたい真ん中に位置している。需要の多い都会側の輸送力を多く設定するためだろう。なお、反対に穴水方面からの列車は折り返しできない。