"文学少女"と死にたがりの道化

 表紙絵にもなってる文芸部の先輩、天野遠子はそれはもう羊さんのようにむしゃむしゃと食べちゃうくらい物語が好きな文学少女というファンタジックな設定。もう一人の部員で主人公な井上心葉は平穏と平凡を愛するただの男子高校生。そんな二人しかいない文芸部に難題が持ち込まれる! という感じのミステリシリーズらしいです。
 純粋にミステリとしてみると完成度はイマイチです。叙述トリックなのかもしれないけど、結末に至る過程が唐突で伏線が殆ど無いのです。

「わたしはベーカー街の名探偵でも、安楽椅子に座って編み物をしながら件を解決する物知りおばさんでもないわ。ただの"文学少女"よ。だから、推理ではなく妄想−−もとい、想像することしかできないけど……」

と語っていますが、読者が想像するにはちょっと情報が足りなさすぎです。
 とはいえ本作の魅力はキャラの魅力です。能天気でお行儀が悪くてうんちくを垂れて三つ編みな文学少女の先輩。これは萌えるね。俺は先輩に弱いんだよ。
 とにかくキャラが立ってて魅力的なのです、早く次巻が読みたくなるくらいに。でもこういうことってシリーズ物では大事だよなぁ。ストーリーとか構成とかは二の次で楽しめます。