『秒速5センチメートル』〜私小説の救われなさ

このまえテレビでやってたので見た。

私にはネタバレしないように感想を書く芸当は出来ないので、ネタバレ全開で。
原作・制作・監督の新海誠氏が私小説だと言ってはいないが、彼の経歴を考えると孤独や別れといった作品で語られるテーマが彼の経験に立脚しているのは間違いだろう(少なくともそう疑われる)。
http://d.hatena.ne.jp/Su-37/20070701#1183221974

ラストのシーンで解釈が分かれるのは、単に演出が言葉足らずなだけだと思う。会社辞めたり彼女に振られたりしても、なお救いを見いだすにはある程度の人生経験が要ると思うよ。挫折経験のない若い子には鬱エンドまっしぐらに見えるのかなぁ。

リアルに書き込まれた背景やレンズワークを駆使した描写は美しい。しかし、よく見ると実写ではあり得ない光彩やSF的な演出はアニメならではだ。あと、本作では音が良い。MT54の唸り、LE-7の地響き、そして新宿駅の雑踏。それらはどんなBGMよりも情景を盛り上げてくれる。

ただ、こういうテーマの作品って昔は鬱エロゲとして流行ったけど、今の萌え市場では売れないんだろうなーと思った。まあ、映像の美しさで売れてはいるんだろうけど。とにかくエンターテイメント性ゼロだし、見てるうちに辛くなってくる。とはいえエロゲをプレイする時間すらない社会人にとって、短時間で心を揺さぶって暫しの郷愁に浸らせてくれる作品は貴重だと思う。