劇場の中心で愛を叫ぶ

結構前の話になるけど、ある大規模なオフ会に参加してきた。それは「劇場版 魔法少女リリカルなのは」を有志で貸し切った映画館の中で、思いのままに叫びながら鑑賞するという物。元々は熱狂的ななのはファンを皮肉った四コマ漫画を実際にやったら面白いんじゃないか、という発想から始まった。とはいえ、突然劇場内で暴れ出したら迷惑極まりないので、事前に交渉して有志の貸し切りという形で開催にこぎ着けたそうだ。そこまでした主催者の熱意には頭が下がる。

そうして集まったのは濃いなのはファンばかり。ヤフオクでのグッズの高騰やコミケ待機列の長さなどから、彼らはとんでもない人達だと勝手に思っていたけど、以外に紳士的で友好的な人達ばかりだった。映画のコピーだったか台詞だったかの「伝え逢いたい 友達になりたいんだ」を体現しているようだった。

オタク界隈の文化について志向の細分化と尖鋭化によって島宇宙的に分散して、大きなヒットやブームは無くなる。といった消極的な論調の話を結構目にする*1。実際「リリカルなのは」シリーズは広く売れてる作品というより、狭くてコアなファンが熱心に支持している作品という印象がある。

今回のオフ会で、そうした狭く閉じた島宇宙の中心に飛び込んできた格好になる。しかし、その空間のなんと居心地の良いことか。同好の士との交流がこんなにも楽しいとは思わなかった。

文化とか売り上げといった大局的な視点で島宇宙論は問題視されるのかもしれない。でも、その島宇宙の中心付近に行って非常に熱い物を感じた。それはオタク文化へのネガティブな批評を吹き飛ばすくらいの熱気だ。「売り上げが足りないのなら、俺たちが幾らでも買い支えるさ!」というくらいに。

*1:「思想地図vol.4想像力」東浩紀北田暁大