『学校を出よう』〜谷川流、その中二病な世界〜

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

学校を出よう!―Escape from The School (電撃文庫)

あらすじ

 ひょんなことから超能力者だらけの学園で過ごす主人公は、平穏な暮らしに戻りたいと願う日々…
といった感じの学園異能系。
タイトルは超能力者だらけの学校から出たいという意味みたい。

後ろ向きで中二病な主人公

 激しくネタバレすると、ラストシーンでヒロインの存在と世界の安定、どちらか一つ選択を迫られるのだけど、その答えが興味深い。

「決められるか、バカ」

ヘタレといえばそれまでだが、主人公の世界観がよく表れた答えだと思う。彼の白昼夢でこんな描写がある、

「あなたの主観は本当にあなたのものですか? 
それが誰かに植え付けられたものではないとなぜ解るのです?(中略)
あなたの脳が都合よく生み出した幻聴では、
本当にないのでしょうか?」

今存在するこの世界に対して疑問を呈しているのである。ファンタジーで世界観に疑問を言い出したら、そもそもお話が成りたたなくなると思うのだけど、あえて作者は問うているのだ。

涼宮ハルヒもそういえば

谷川流の代表作「涼宮ハルヒの憂鬱」でも同様の表現が出てくる。主人公に向かってハルヒが語り出すシーンで、

「小学生の、六年生の時。家族みんなで野球を見に行ったのよ
球場まで。(中略)
あたしは愕然としたの。こんなにいっぱいの人間がいるように
見えて、実はこんなの日本全体で言えばほんの一部に過ぎないん
だって。(中略)
あたしは急にあたしの周りの世界が色あせたいに感じた。(略)」

というのがある。

谷川流の世界観

 こういう世界認識に対する疑問は、知識や視野が広がる中学生特有の思考じゃないかな。いうなれば中二病
 セカイ系的表現を狙った故なのか、作者が中二病だったのか、どちらでもよい。まあとにかく、こういった当たり前だと思っていた世界観に疑問を投げかける発想は個人的に大好きだ。メタ的でセカイ系だから? いや、単に私が中二病だからかもしれない。