うたかた考察
2004年10月から12月にかけて放送されたテレビアニメ『うた∽かた』を再び見る機会があった。美しい背景美術に目を奪われがちだが、なかなか凝った構成かつ鬱シーンも多い魅力的な作品。10年近く昔の作品で語り尽くされた感はあるが、もはや考察サイトとかが消えてしまっているので、全体に散りばめられた伏線について再び考察してみたい。
第10話で本作の黒幕サヤがヒロインに対して「9つの力を使って7つの罪を見た」と語っている。9つの力についてはwikipediaなんかを見れば書いてあるけど、7つの罪とはなんであろうか。実は宗教用語に「七つの大罪」というのがあって
- 高慢
- 物欲(貪欲)
- ねたみ(嫉妬)
- 憤怒
- 貪食
- 色欲(肉欲)
- 怠惰
という風に七つあるらしい。果たして、これらが9話までの描写で満たされているだろうか? 各話毎に振り返ってみた。
- 1話 邂逅の初夏
- 本作のヒロイン一夏と同年齢?の少女舞夏(まなつ)の出会い。
- →罪の描写は無い。
- 2話 近接の夜空
- クラスメイトのマキの彼にメールアドレスを教えてしまい、付きまとわれる。
- →貪食か?
- 3話 焦熱の砂浜
- 海水浴に行って、小学校の同級生に会う。彼女は主人公達の中学に通いたかったが、親の都合で引っ越していた。一夏は親の腕時計をなくす。
- →高慢 主人公達の学校は有名なお嬢様校であり、友達の皐月はぶしつけな一夏の同級生に高飛車に振る舞う。
- 4話 驟雨の湖畔
- 林間学校。クラスメイトは仕事をさぼるが、一夏は一人で掃除。
- →怠惰 クラスメイト達は掃除や課題をさぼる。
- 5話 落涙の蕾花
- 花火大会で友達の皐月の小学校時代の男友達・臨と会う。
- →憤怒 友達の蛍子が臨と抜け出している所を皐月が目撃。
- 6話 濡肌の微熱
- 一夏の憧れる大学生のセイがお隣さんの女性サヤと会っている姿を見て嫉妬。
- →ねたみ(嫉妬)
- 7話 木末の嫉妬
- 舞夏が夏風邪を引く。
- →ねたみ(嫉妬) 一夏はセイを前にサヤに対する引け目を感じて、思わず自分の耳飾りをむしりとる。
- 8話 散華の衝動
- 病院のボランティアに行く。患者が花を見て取り乱す。
- →物欲(貪欲) 患者は花が好きだがアレルギーになって花を触れなくなっていた。
- 9話 恋愛の痛痒
- 友達と江ノ島へ。友達の彼氏が浮気している場面を目撃。
- →色欲(肉欲) 友達の皐月は過去にレイプされた事を思い出す。
- 10話 死生の再会
- 伏線回収と謎説明の回。頑張って立ち向かおうと決意する一夏。
- 11話 別離の波動
- 父親の転勤、引っ越しを伝えられずにいる一夏。実は友達は知っていた。
- 12話 欠片の詩歌
- 一夏はサヤの家に。感動の最終回。涙は泡沫に。
という具合に2話から9話まで人間の負の感情が露骨に描写されている。多少不自然さはあるが、七つの大罪も網羅されているのではないだろうか。初見では「なぜ今この描写なんだ?」と不自然に感じた演出も、伏線のためだと考えるとスッと理解できる。青く美しい空や湘南の海の描写が美しい本作は、実は思春期の少女が汚い負の感情を目の当たりにして大人になってゆく成長ストーリーだったのだ。